HAPPY!!
「オレさー、バレンタインデーの当日に休んじゃって、チョコ貰えなかったんだよねー」


英語の授業中、木内が残念そうにそう言った。


「そりゃ災難だ」


そんな風にしか受け答えできない自分がにくい。


「だれかチョコくれないかな」


その言葉に、うしろの席のももこがあたしを突いてきた。


「M、作ってきた?チョコ」

「うん・・・・。何で知ってるの?」

「スキー教室の時に相談に乗ったの、あたしじゃん!」


ももこは得意げに言う。


「あ、そうだった」

「あたしに作戦があるから。しっかり乗ってきなさいよ」

「う・・・・、うん」


ヒソヒソ話終了!


「何話してたんだよ」

「いや、木内がチョコ欲しいっていうからさ、ちょっとね」


意外。

だって、木内モテるのに。


「そうそう、オレ去年3つ貰ったのにさ、今年0個だよ。最悪!!」

「去年誰に貰ったの?」

「近所のガキと、大学生のいとこと、おばあちゃん」


逆に可愛そうだ。


「全部義理だね」

「そうだけどさ。誰がくれようと、貰ったら嬉しいよ」

「そうなの?」

「ああ」


男の子って、そういうものなのかな。

好きな人にもらうのが一番嬉しいんじゃないのかな。


「じゃあ、あたしがあげようか?」


ももこがそう提案すると、


「お前のは毒が入ってそうで怖い」

「そんなひどい言い方するなよー」

「そんなのどこで入手するのさ」


あたしが突っ込むと、


「ドラッグストア」

「そんな簡単にいくか」

「ま、あたしなら入れるかもね。Mは入れないよね」


ももこがニヤリとしながら言う。


「コイツは入れないだろうな」

「殺人者になんてなりたくないもん」

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