HAPPY!!

「この間、不審者が学校に来たの知ってる?」


さっきと立場が逆転して、あたしは窓際に座り、木内がモップをかけている。

不審者が出たとは、初耳だ。


「ウソ?!知らない!」


もしそれが本当なら、学校でも大々的に噂されるだろう。

ということは、それも冗談なのだろうか。


「その時さ、俺らは屋上に追い詰められたのさ。」


あ、冗談だ。


「ピンチじゃん!!」


でも気付いてないフリをして適当に言う。


「その時、降矢が指を鳴らしたわけ。」


もう面倒くさいとはいえないので、とりあえず落書きが酷い黒板をきれいにしながら言う。


「ほうほう。」

「そしたら、ヘリコプターが降りてきて、あっという間に捕まえた。」


木内もモップをかけるのをめんどくさがっている。

こんな二人が美化委員だから、うちのクラスは汚いって先生に怒られるんだ。


「すごいね!!」

「俺ら全員無事救出。」

「無事で何より。」

「そうそう。」

「でも、木内は全治1週間くらい消えてれば良かったのにね。」

「おい!!」


素直になれないあたしは、笑いながらそう言う。

素直にすきと言えたら、どんなに楽なことか。

あたしは素直じゃないからそんなことさえも言えなくて、苦しいんだ。

木内は、お前ほんと冷たいな、と言いながら頬を膨らました。

その姿がふぐみたいでかわいいな、と思った。
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