HAPPY!!
木内は、再びモップをかけ始め、ふと気付いたかのように、あたしを睨んできた。


「ところで、お前の塗ってた所、なんか汚いんだけど。」


それを言われると立つ瀬がない。

どうせあたしは不器用だ。


「え~、気のせいじゃない?」


流そうとしても、無駄だった。


「塗りムラだらけだぞ。」


たしかに、塗りムラだらけだ。

もう少し器用な人間に生まれてきたかった。


「そ、そういうことか・・・・・・・。」

「まさかァ~・・・・・・、おれがいない間もこんな塗り方でやってたとか~・・・?」


木内は部活のミーティングに最初だけ参加していたから、あたしが一人で最初のほうは仕事をしていたのだ。

たしかに、そのときはスピード重視でガンガンかけていたから、塗りムラが出来て当たり前だ。


「あはは・・・・・・・。どうでしょうねぇ・・・・・。」

「だからおれお前を放置させるの嫌だったんだよ。」


放置って、あたしは物じゃないんですけど。


「すみませんね、不器用で!!」


あたしがそう言うと、


「いや・・・・・・・。別の意味もあるけど。」


と木内が呟いた。


「へ?」

「お前が一人でやってて、他のクラスの男子がお前に話しかけたりしたら、困るんだよね。オレ。」


どういう、意味だ?


「何で?別にあたしあんたの弱み握ってないけど?」

「バカ・・・・・。」

「誰がバカだと!?」


どうせあたしは不器用でバカだよ!

それにしても、どういう意味なんだろう。
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