華恋堂
 そやから、突然彼にデートに誘われたときは、そりゃあびっくりしました。模試のことを話してら急に
「明日の土曜日、絵見に行かへん」
思わず彼の顔を見たけど、恥ずかしゅうて、すぐうつむいてしまいました。うつむいたまま
「へぇ」
言うたら、彼は
「やったぁ~」
て、無邪気に喜んでくれました。

 その日の夜、デートに着ていく服を選んどったんやけど、いざ出かける前に着てみたら、別の服の方がええような気がして、あれこれ着替えとったら、時間ばっかり経って・・・走ってバス停に行きました。なんとか、約束の時間には間に合うたけど、汗びっしょりで、それが恥ずかしゅうて、もじもじしとったら、彼がにっこり笑うて、
「そのワンピースよく似合うね」
言うて、服のこと誉めてくれから、ほっとしたんどす。それで落ち着いて二人で絵を見てまわりました。あれから、いろんな展覧会に行きましたけど、あんなにドキドキしながら絵を見たことはおへん。恋すればこそどすなぁ。何年経っても、あのときの喜びは、昨日のことのように思い出せるんどす。

「恋は思案の外」とか言いますけど、好きになる気持ちは、自分でコントロールできるものやおへん。恋愛は、人生の長い道のりでときおり咲く「華」なんやないかと思います。
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