恋時雨~恋、ときどき、涙~
〈ありがとう〉


わたしたちは、たくさん話をした。


健ちゃんは大きな口で、わたしはメモ帳にボールペンを走らせた。


【どうしてライオンが好きなの?】


メモ帳を見た健ちゃんは、カニさんウインナーを飲み込んでから答えた。


「かっこいいから。強いし」


なるほど。


子供みたいな理由だ。


本当に、それくらいにしか思わなかった。


ライオンが好きな本当の理由を、わたしは何も分かっていなかったのだ。


健ちゃんの言葉ひとつひとつには、本当はものすごく深い意味があったのに。


わたしがふーんと頷いていると、今度は健ちゃんが訊いてきた。


「じゃあ、真央は? なんで、うさぎが好きなんだよ」


【耳が長いから】


「耳?」


健ちゃんは不思議そうな顔で、首を傾げた。


わたしは頷いて、うさぎの手話をした。


両手の甲を前に向け、うさぎの長い耳のようにして、耳に手を添えた。


そして、メモ帳にボールペンを走らせた。


【うさぎになりたい】


それを読んだ健ちゃんが首を傾げた。


「何で?」





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