恋時雨~恋、ときどき、涙~
【わたしも耳が長かったら、音がきこえるかもしれない】
わたしはかなり本気で、真面目な顔をした。
でも、健ちゃんはあっけらかんとして笑った。
「単純だんけ。バカだな」
【ひどい まじめに言ってるのに】
そう書いたメモ帳をぶっきらぼうにテーブルの上に投げ出して、わたしは健ちゃんを睨んだ。
「うさぎは、しゃべれねんけな。日本語も、知らない。たぶん。手話もできねんけ」
わたしは、妙に納得した。
なんだ。
そっか。
それなら、今のわたしよりだいぶ不便だ。
わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。
【やっぱり 今のままでいい】
健ちゃんは、喉の奥が見えるくらい大きな口でわははははと笑った。
「だろ? それに、真央の耳は、心の中にちゃんとあるんけ」
わたしは、ワンピースの上からそっと心臓を押さえた。
そして、首を振った。
ううん。
ない。
わたしの心の中に、耳はないと思う。
わたしはかなり本気で、真面目な顔をした。
でも、健ちゃんはあっけらかんとして笑った。
「単純だんけ。バカだな」
【ひどい まじめに言ってるのに】
そう書いたメモ帳をぶっきらぼうにテーブルの上に投げ出して、わたしは健ちゃんを睨んだ。
「うさぎは、しゃべれねんけな。日本語も、知らない。たぶん。手話もできねんけ」
わたしは、妙に納得した。
なんだ。
そっか。
それなら、今のわたしよりだいぶ不便だ。
わたしは、メモ帳にボールペンを走らせた。
【やっぱり 今のままでいい】
健ちゃんは、喉の奥が見えるくらい大きな口でわははははと笑った。
「だろ? それに、真央の耳は、心の中にちゃんとあるんけ」
わたしは、ワンピースの上からそっと心臓を押さえた。
そして、首を振った。
ううん。
ない。
わたしの心の中に、耳はないと思う。