恋時雨~恋、ときどき、涙~
どうやら、友達とバーベキューをしているらしい。


わたしは、強く首を振った。


鼻の頭と、耳まで赤くしてよろよろする男の人は、若いのか歳相応なのか、よく分からなく見えた。


たぶん、20代後半から30代前半くらいなのだと思う。


わたしは、男の人の手を振りほどこうとして、必死に抵抗した。


でも、どんなに抵抗しても、男の人は力を緩めない。


わたしは、男の人の膝を蹴っ飛ばした。


「痛てえなあ」


男の人は穏やかな表情を歪ませて、わたしを怒鳴ったようだった。


大きな口から、アルコールの匂いが漂ってくる。


でも、少しもびくともしない岩のようなわたしを見て、きょとんとしてしまった。


わたしが怖がったりしないから、拍子抜けしたのだろう。


怖くなんかない。


怒鳴り声がどういうものなのか、わたしは聴いたことがないのだから。


抵抗するわたしの腕を、男の人はもっと強い力で掴んできた。


少し、痛いくらいだ。


これが、男の力なんだろうか。


すごい威力だ。




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