恋時雨~恋、ときどき、涙~

幸せを祈る時

翌日。


朝早くから順也に呼ばれて、わたしは病室を訪れていた。


窓辺に射し込む、新鮮な朝日。


今日は朝からすっきりと晴れて清潔な青空がどこまでも広がった。


〈おはよう〉


ドアを閉めて手話をすると、順也はにっこり笑った。


「おはよう、真央」


ベッドに座る順也の両手が、いつもより優しい動きをした。


「昨日、あの後、亘さんも来たんだ。全部、きいたよ。果江さんのことも」


わたしは、順也から目を反らした。


その事は、考えたくない。


〈それなら、もういい。わたしがバカだった。自惚れてた〉


花瓶の水を変えようとして立ち上がったわたしに、順也が言った。


「好き、だったんじゃないの? 健太さんのこと」


わたしは、苦笑いをした。


「真央? 何で、我慢してるの?」


順也の真っ直ぐな目を見ていると、気持ちが揺らいだ。


だからなのかもしれない。


わたしは、反抗する子供のように、両手を乱暴に動かした。


〈そうするしかないんだよ! 我慢しなきゃ、諦めなきゃ、迷惑をかけるから〉


順也が、表情を歪めた。




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