恋時雨~恋、ときどき、涙~
「ぼくは、一度も、迷惑だと思った事はないよ」


〈順也は、そうなのかもしれない。でも、わたしは、我慢ばかりしてきたよ〉


わたしと順也は、睨み合った。


〈テレビも、音楽も。本当は、夢だってある。でも、諦めなきゃいけないんだよ〉


順也が、悲しい顔をして目を伏せた。


それでも、わたしは畳み掛けるような手話をした。


〈結局、諦めるしかないんだよ〉


本当は、たくさん、友達が欲しい。


楽しいおしゃべりをしてみたい。


人並みに恋をして、デートをしてみたい。


将来は、たくさん笑顔でふれあえる接客業に携わってみたかった。


でも、諦める他ないのだ。


わたしの目から、涙がこぼれた。


悔し涙だ。


順也がわたしの手を握って、やわらかく微笑む。


「真央の気持ち、分かるよ。でも、亘さんの気持ちもよく分かる」


わたしは、順也を睨んだ。


でも、順也はただ微笑んでばかりいる。


「もし、真央が果江さんなら。ぼくも、亘さんと同じ事をしていたかもしれない」


〈どうして?〉





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