恋時雨~恋、ときどき、涙~
天真爛漫な幸はとは真逆で、菜摘は物静かで独特の雰囲気を持っている女の子だった。


でも、面倒がらずに、わたしと一緒に居てくれる。


どこか掴みにくい性格の菜摘だったけれど、一緒に居るだけでとても安らいだ。


菜摘は、順也が持っている優しい空気と同じ雰囲気を持っていた。


幸は、毎日、遅刻をする。


でも、その理由を知っているから、わたしも菜摘も何も言わない。


何かしてあげられる事と言っても、何も無かったけれど、陰ながら応援していた。


午前9時30分。


今日も、幸は遅刻だ。


わたしと菜摘は、いちばん後ろの席に並んで座っていた。


もうじき先生が来る頃、菜摘がわたしの肩を叩いてきた。


「あのさ……長澤さんだっけ」


長澤。


静奈の名字だ。


わたしが神妙な面持ちで見つめると、菜摘は回りを気にかけながら言った。


「最近、来てないけど。学校、辞めたの?」


わたしは首を振った。


【ちがう
 たぶん
 そのうち来るよ】


わたしのルーズリーフを見て、菜摘が首を傾げた。


「たぶん?」




< 231 / 1,091 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop