恋時雨～恋、ときどき、涙～
隣では長澤静奈（ながさわ しずな）が、上機嫌でハンドルを操作している。


静奈は、わたしのたったひとりの親友だ。


半分ほど開いたウインドウから、ぬるい潮風が入ってくる。


まるで、突風のようだ。


強い風にあおられて、長い黒髪がわたしの頬にへばりついた。


その髪の毛を手で乱暴に振り払い、わたしは、運転している静奈の左肩を強く叩いた。


〈わたし、行かないから！〉


今すぐ、ここに降ろして、と強い目で訴えると、静奈はサイドミラーで後方を確認して、路肩に車を寄せて停車させた。


後方から迫ってきた車が、数台、わたしたちの車を器用によけて追い越して行った。


すらりとした、華奢な体型。


ピンクアッシュ色のセミロングヘアー。


パイル生地のシンプルなデザインのワンピースが、静奈にはとても良く似合っている。


同じ１８歳にしてはやけに色っぽく、ぽってりとした唇。


ブルーグレー色のカラーコンタクトレンズ。




< 3 / 1,091 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop