恋時雨~恋、ときどき、涙~
3章:雪時雨

朝焼けの手紙

トレーニングセンターの2階の天窓には、溜め息が出てしまうような冬の青空が広がっている。


白い一筋の陽光が、コートに射し込む。


わたしは、喉がからからになってしまうほど緊張していた。


順也が静奈に決死のラインメッセージを送ってから、1週間が過ぎた。


今日は、順也のバスケットボールの練習試合だ。


コートでは、両チームが試合前の練習をしていた。


2階は観客席になっていて、満員ではないがギャラリーであふれている。


健ちゃんが、わたしを小突いた。


「そんなに、きょろきょろするな。怪しい人だんけ」


〈でも〉


わたしは、健ちゃんを小突き返した。


だって、静奈が来るかもしれないのだ。


いや、来ないかもしれない。


わたしは、もう一度、観客たちを丁寧に見渡した。


がっかりした。


不意に、溜め息が出る。


静奈らしい背格好の人は、いない。


もうじき、試合が始まるのに。


コートで練習をしていた選手たちが、一気にはける。


その時、順也が爽やかな笑顔で、上にいるわたしと健ちゃんに手を振ってきた。


わたしは手すりから身を乗り出して、手話をした。


〈頑張れ〉


頑張れ、順也。



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