恋時雨~恋、ときどき、涙~
順也の白い歯がこぼれる。


「ぼくに、惚れるなよ」


わたしと健ちゃんは顔を合わせて、同時に吹き出した。


優しい空気が漂っていた。


わたしは、天窓を見上げた。


抜けるような青空に、冬独特の分厚い雲が密集して流れていく。


わたしは、祈るように手すりを握り締めた。


静奈。


お願い。


素直になって、順也と向き合って欲しい。


今の順也を見て欲しい。


健ちゃんが、わたしの手にそっと触れた。


「始まるんけ」


どうやら、ホイッスルが鳴り響いたらしい。


健ちゃんがホイッスルを吹く真似をしていた。


わたしは頷いてコートを見下ろした。


両チームが平行線を描き、整列している。


順也がいるチームは赤いユニフォームで、相手チームは白いユニフォームだ。


キャラメル色のバスケットボールが高く上がる。


相手から相手へ緩やかでスピーディーな弧を描きながら、ボールが素早く移動していく。


わたしは、目を奪われてしまった。


すごい。


みんな、自分の足のように、車椅子を器用に操縦している。


いい顔だ。


すごく、生き生きしている。


健ちゃんが、わたしの肩を叩いた。


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