恋時雨~恋、ときどき、涙~
真央、よく頑張ったね。


すごい、すごい。


カレーライス作ろうね。


そう言って、お母さんはカレーライスを作ってくれた。


じゃがいもと人参がゴロゴロ入った、隠し味にビターチョコレートが入ったカレーライス。


夕方6時になってカレーライスが出来上がった時、キッチンの天井のランプがくるくる回って点滅した。


健ちゃんだ!


わたしはエプロンをしたまま、テーブルの上に置いていた手紙と写真をつかんで、玄関へ走った。


ランプのボタンを押して、除き穴を確認した。


急いでドアを開けた。


「真央」


やっぱり、健ちゃんだった。


〈おかえりなさい〉


手話をしたわたしを見るなり、健ちゃんはとっさにドアを勢いよく閉めた。


あれ?


わたしはもう一度ドアを開けた。


やっぱり、健ちゃんが立っていた。


〈おかえりなさい〉


すると、また、健ちゃんはドアを閉めてしまった。


何をしているんだろう。


へんな健ちゃんだ。


わたしがドアを開けて〈おかえりなさい〉と手話をする。


健ちゃんはすぐさまドアを閉める。



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