恋時雨~恋、ときどき、涙~
メモ帳を見せると、

「とにかく、買い物は後にして、入り口のベンチで待ってて。すぐに戻るからさ」


と中島くんはそれだけ言うと、大急ぎでレジへ並び、嵐のようにスーパーマーケットを飛び出して行った。


わたしは空っぽの買い物かごをぶら下げたまま、つったっていた。


なに?


いったい。


圧倒されてしまった。


あんなふうに楽しそうで生き生きしている中島くんを見たのは初めてだった。


呆然とつったっているわたしの顔を扇いだのは、静奈だった。


「真央。真央! どうしたの?」


ハッとして我に返ったわたしは、今あった出来事を静奈に説明した。


「中島が?」


静奈も少し驚いた様子で、でも、可笑しそうに笑う。


「まあ。とりあえず、待っとこうか。いいもの持ってきてやるって、中島が言ったんでしょ?」


〈そうだけど……〉


「中島、約束やぶるようなやつじゃないしさ、とりあえず、待ってみよう」


わたしと静奈は、中島くんを待つことにした。


そして、15分もしないうちに、本当に中島くんは戻ってきた。


額に、大粒の汗を滲ませていた。


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