恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしは壁時計を指差した。


健ちゃんの様子がおかしい。


「うん。ああ……分かってるんけ。うん」


と珍しくもじもじしている。


〈どうしたの? 何か話でもあるの? 今日、遅くなるとか?〉


ぽんぽん、お手玉を投げるように質問すると、健ちゃんは、


「いや、何でもねんけ」


と何かを吹っ切るように笑った。


そして、「真央も遅れるなよ」とテーブルの上に用意しておいたお弁当を抱えて、アパートを出ていった。


一体、何だったのだろう。


何か、言いたいことでもあったのだろうか。


変な健ちゃんだ。


へんなのは、いつものことだけれど。


その時、ポケットでスマホが震えた。


静奈からだった。



静奈
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
いま朝マック中。
駅の中央口に待ち合わせ変更ね!








そのメールには写真が添付されていた。


わたしは笑わずにはいられなかった。


静奈が写したのだろう。



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