恋時雨~恋、ときどき、涙~
もしかしたら、違うかもしれないけれど、あの飛行機に果江さんが乗っているかもしれない。


わたしは空に向かって、両手を突き上げた。


果江さん、


〈誰よりも、幸せになってやろうね!〉


頑張れ! 、空に向かってしたわたしの手話は、春の青空に吸い込まれていくようだった。


手紙を鞄にしまって、わたしは駅に向かって歩き出した。


元気な果江さんと再会できることを願って。


朝、健ちゃんの様子がおかしかった理由は、きっと、この事だったのだろう。


昨日、亘さんから果江さんのアメリカ行きを聞いた健ちゃんは、迷ったのだと思う。


わたしに、果江さんのアメリカ行きを教えるべきか、約束通り教えずにいるべきか、を。


だから、何度も「行って来ます」を繰り返して、なかなかアパートを出なかったのだろう。


誰よりも幸せになってやろうね。


果江さんからの言葉が、わたしの心を暖めていく。


Good luck, Kae.

幸運を祈ります、果江さん。









駅の中央口に到着すると、3人がオーバージェスチャーをしていて、行き交う人たちから見られては笑われていた。



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