恋時雨~恋、ときどき、涙~
どんなに大きな声を出しても、3人の声がわたしの耳に届くことはないのに。


それでも、3人は毎朝、こうして大声とオーバーなジェスチャーをわたしにしてくる。


特別扱いをされていない気がして、わたしは嬉しいのだ。


「みんな揃ったことやし、行くで。遅刻してまうわ」


幸の一声で、わたしたちは歩き出した。


この春色の青空をゆっくり流れる雲のように、わたしたちに残された一年も、穏やかに過ぎて行けばいいのに。


でも、そんなにうまくはいかない。


現実はやっぱり現実で、甘くないし、易しくもないのだ。


新学期そうそう配布されたプリントは、わたしに現実を突きつけた。


進路調査表だった。


隣に座る静奈も幸も、男子グループの輪にいる中島くんも、プリントを見つめたまま固まっていた。


みんなは、どうするのだろう。


みんなは、未来を思い描き、先を見据えているのだろうか。


わたしは……何も決めていない。


またひとつ、悩みが増えた。


講義には当然のように身が入らずぼんやりしていると、ポケットの中でスマホが震えた。


こっそり開いてみる。




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