恋時雨~恋、ときどき、涙~
小さくてもええねん。


せやから、こだわりの豆ひいてめっちゃ美味いコーヒー出して。


こだわりの材料でパニーニでランチとかやって。


と幸はとても楽しそうに夢を語った。


カフェ、か。


幸にぴったりだ。


明るくて元気で、人懐こくて。


人を見た目や印象なんかで判断したりしなくて、男女隔たりなく平等で。


人情に熱くて。


こんな店員さんがいるカフェなら、きっと、大繁盛するに決まってる。


「幸まで夢に向かってるなんて」


あー、どうしよう、と静奈は芝生に倒れるように寝転んだ。


「幸が店出したら、私のこと雇ってよ」


芝生をごろごろしながら、静奈は笑った。


「ええで! 大歓迎や」


静奈も、真央も、旬も、とひとりひとりを指差して、


「みんなまとめて雇ったるで」


と幸は楽しそうに口と両手を同時に動かした。


穏やかに流れる昼休みの中、わたしはずっと背中を丸め続けた。


肩身が狭かった。


どうしよう。


もう、みんなが前を見ている。


未来を見つめて、歩き始めているのに。


わたしは、どうしたいのだろう。



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