恋時雨~恋、ときどき、涙~
初めてのデートに3時間も遅れ、連絡もなく、あげくはとることもできず。


それでも、彼氏は幸を待っていたのだ。


「うちが向こうとる途中でな、雨が降ってきたんよ。さすがに帰ってしもたと思っててん」


でも、幸の彼氏は待っていたのだ。


「桜の木の下でな、こうしてな」


と幸は桜の木に寄りかかって、空を見上げる仕草をした。


さっきの彼のように。


「雨に濡れて、びしょ濡れやったわ。ストライプ柄のシャツ」


ハッとした。


幸が、さっきの彼のシャツに執拗に食い付いた理由が、そこにあったのだろう。


「せっかくのイケメンも、雨で台無しやったわ」


と、幸は笑った。


とても切なそうに、笑った。


「遅くなってしもてごめん、て声かけたんやけど。普通、3時間も遅れて来たら、さすがに怒るやろ」


でもな、あらしは怒ってへんかった。


優し過ぎんねん。


怒るどころか、めっちゃ笑うとった。


『なんや。せっかくの美人が台無しやで!』


そう言って、げらげら笑ったらしい。


「うちな、不安で、さすがに泣けてきてな。初めてのデートに3時間も遅れてしもたんが、情けのうてな」


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