恋時雨~恋、ときどき、涙~
細身のジーンズに、真っ白なシャツワンピース。


髪の毛を無造作にひとつに束ね上げているその後ろ姿を見て、ほっとした。


良かった。


幸が、居なくなってしまったと不安だった。


わたしの足音にでも気付いたのか、幸が振り向いた。


「真央、起きたんか」


幸はすっぴんでも美人だった。


幸は、笑っていた。


「おはようさん」


いつもの笑顔だ。


嬉しかった。


わたしが頷くと、


「なんや。まだ寝ぼけ眼やんか。朝食できとるで。座り」


と幸はテーブルを指差した。


半熟のスクランブルエッグ。


トマト、レタス、ブロッコリー。


こんがりバタートースト。


湯気が立ち上る、ポタージュスープ。


ヨーグルトにグレープフルーツを入れているあたりに、幸の優しさを感じた。


すごい。


ホテルの朝食みたい。


「どや。腕によりをかけてみたで」


と言った幸の両手は、とても優しい仕草だった。


赤いエプロンを隣の椅子に掛けて、幸はどっかりと座った。


「突っ立っておらんで、座りや。さ、食うで」


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