恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしひとりだけ、取り残されるんじゃないかって。


不安だった。


わたしだけ、置いてけぼりにされるような気がして。


怖かった。


みんなには未来が見えているのに。


わたしの未来は真っ白な壁に閉ざされていて。


同じ未来を夢みて、描いて、想い合っている順也と静奈がうらやましかった。


わたしと健ちゃんは一緒に暮らしてるのに。


でも、果たして同じ未来を描いているのか。


それが何よりも不安だった。


わたしは、健ちゃんを指差した。


〈健ちゃんにつりあう女の子になりたくて。不安で、焦ってばかりいた〉


涙を止めることができなかった。


舞い散る桜の花びらのように、一枚、一枚。


ひと粒、ひと粒。


頬を伝っては落ちる、涙。


〈教えて〉


「なに?」


わたしは、健ちゃんを指差した。


〈健ちゃんとわたしに、未来はあるの?〉


「あるに決まってるんけ」


正装に身を包んだ健ちゃんがやけに大人に見えて、遠くに感じた。


〈それは、同じ未来?〉


そう聞いた瞬間、わたしの体は健ちゃんの腕の中にあった。



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