恋時雨~恋、ときどき、涙~
ひとつ真を置いて、健ちゃんのお母さんはゆっくりと手を動かした。
「寂しいというより……とても幸せそうだった」
美雪は教室の窓辺に立って、幸せそうな顔で春の青空を見上げていた。
その横顔がとても綺麗だった。
「気付いた時、わたしはできたばかりのグループの輪を抜け出して、美雪の肩を叩いていたの」
『ねえ、岡本さん』
耳が聴こえない美雪は微笑んで、じっとわたしの唇を見つめていた。
『私、岸田志穂(きしだ しほ)』
し、ほ?
美雪は口をぱくぱくさせて、にっこり笑った。
「まるで恋をしたような気分だったわ。不思議だった。私は、美雪の笑顔に夢中になった」
『私と親友にならない?』
「自分でも呆れちゃった。いきなり親友にならないか、だなんて。口から飛び出していたんだもの」
楽しそうに笑う健ちゃんのお母さんを見つめていると、わたしは胸が痛かった。
なんだか、わたしと静奈みたいだと思った。
『私、長澤静奈。今日から友達ね』
その静奈とは、あの病院以来、音信不通に近い。
短大で顔を合わせても、気まずい空気が流れるだけで、お互いに避けている。
「寂しいというより……とても幸せそうだった」
美雪は教室の窓辺に立って、幸せそうな顔で春の青空を見上げていた。
その横顔がとても綺麗だった。
「気付いた時、わたしはできたばかりのグループの輪を抜け出して、美雪の肩を叩いていたの」
『ねえ、岡本さん』
耳が聴こえない美雪は微笑んで、じっとわたしの唇を見つめていた。
『私、岸田志穂(きしだ しほ)』
し、ほ?
美雪は口をぱくぱくさせて、にっこり笑った。
「まるで恋をしたような気分だったわ。不思議だった。私は、美雪の笑顔に夢中になった」
『私と親友にならない?』
「自分でも呆れちゃった。いきなり親友にならないか、だなんて。口から飛び出していたんだもの」
楽しそうに笑う健ちゃんのお母さんを見つめていると、わたしは胸が痛かった。
なんだか、わたしと静奈みたいだと思った。
『私、長澤静奈。今日から友達ね』
その静奈とは、あの病院以来、音信不通に近い。
短大で顔を合わせても、気まずい空気が流れるだけで、お互いに避けている。