恋時雨~恋、ときどき、涙~
だから、余計に切なくなった。


「そしたらね。美雪、私に小指を出して笑ったの」


―親友の誓い


「私の手のひらに、ひと文字ずつ、美雪が書いた」


小指を結ぶことが約束の手話だと知った時、私は胸が熱くなった。


美雪と、もっと話してみたい。


「それからはもう夢中だった。本を買ったり、ビデオを観たり。勉強なんかそっちのけで、必死に手話を覚えた」


私と美雪は、毎日一緒だった。


美雪と居ると本当に楽しくて、世界が輝いて見えた。


美雪に初恋が訪れたのは、高校一年生の夏だった。


「同じクラスの男の子」


そう言って、健ちゃんのお母さんは紙にボールペンを走らせた。


「美雪の彼氏になったひとよ」


―松本 祐司

まつもと ゆうじ


「クラス1の秀才で、背が高くて、スポーツ万能だった。美雪と祐司は、本当に良くお似合いのカップルだった」


健ちゃんのお母さんは紙に自分の名前を付け加えて、順番に指差した。


美雪 祐司 志穂


「私たちは、毎日、一緒だった。とても仲良しだったの」


なんだか、わたしと順也と静奈みたいだ。


そう思った。



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