恋時雨~恋、ときどき、涙~
わたしたちも、いつも一緒だった。
〈あの……〉
わたしは、健ちゃんのお母さんの顔を扇いだ。
ひとつ、気になったからだ。
〈どうして?〉
さっきから。
健ちゃんのお母さんはさっきから「だった」と過去形ばかりだ。
〈ひとつ、きいてもいいですか?〉
「なに?」
わたしはたずねた。
〈どうして、だった……過去形なの?〉
健ちゃんのお母さんは目を細めたあと、小さく小さく微笑んだ。
そして、ゆっくりと両手を動かした。
「もう、いないから。ふたりはもう……いないのよ」
背中を丸めてうつむくその姿はまるで別人のようで、見ているこっちが切なくなる。
「いないって……」
順也がつぶやく。
健ちゃんのお母さんが小さく頷いた。
「高校三年生の夏だった。私たちは3人で買い物へ出掛けたの」
待ち合わせ場所は、海が見えるバス停。
先にわたしと祐司が着いて、まもなくして美雪がやってきた。
道路を挟んで向こうに居た美雪は、私たちを見つけるなり楽しそうに横断してきた。
もう、目の先まで、車が迫っていたことにも気付かず。
〈あの……〉
わたしは、健ちゃんのお母さんの顔を扇いだ。
ひとつ、気になったからだ。
〈どうして?〉
さっきから。
健ちゃんのお母さんはさっきから「だった」と過去形ばかりだ。
〈ひとつ、きいてもいいですか?〉
「なに?」
わたしはたずねた。
〈どうして、だった……過去形なの?〉
健ちゃんのお母さんは目を細めたあと、小さく小さく微笑んだ。
そして、ゆっくりと両手を動かした。
「もう、いないから。ふたりはもう……いないのよ」
背中を丸めてうつむくその姿はまるで別人のようで、見ているこっちが切なくなる。
「いないって……」
順也がつぶやく。
健ちゃんのお母さんが小さく頷いた。
「高校三年生の夏だった。私たちは3人で買い物へ出掛けたの」
待ち合わせ場所は、海が見えるバス停。
先にわたしと祐司が着いて、まもなくして美雪がやってきた。
道路を挟んで向こうに居た美雪は、私たちを見つけるなり楽しそうに横断してきた。
もう、目の先まで、車が迫っていたことにも気付かず。