恋時雨~恋、ときどき、涙~
「真央さん……あなたを傷つけたくて言ってるわけじゃないの」


健ちゃんのお母さんが、わたしの涙を見て慌てたように両手を動かす。


「でも」


とその手が言いかけた時、順也が割って入った。


「真央。泣かないで。泣かなくていい」


優しくて大好きな順也の両手が、涙で霞んで見えた。


本当は泣きたくない。


それでも、涙は止まらなかった。


何も言い返せない現実が悔しくて、情けなくて。


健ちゃんのお母さんが言っていることを、認めざるえないことが、何よりも悲しくて苦しかった。


「ちょっといいですか」


順也が、健ちゃんのお母さんを見つめた。


「真央と健太さんは違うかもしれない。そうは思えませんか」


順也が必死になってわたしをかばうその姿が、無性に泣けた。


「その、美雪さんと祐司さんとは、違います」


順也を見つめながら、健ちゃんのお母さんは難しい顔をした。


「真央と健太さんは、美雪さんと祐司さんじゃない。ふたりを重ねて見ないでください」


わたしは、なんて幸せ者なのだろう。



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