恋時雨~恋、ときどき、涙~
まずは、この部屋にあるわたしの荷物をまとめなきゃいけない。


わたしの意志を伝えて、お父さんとお母さんに承諾しともらわなければいけない。


短大の残りをどうするのか、考えなければいけない。


それから、健ちゃんに別れを告げなきゃいけない。


わたしには、時間が必要だった。


手紙を読み終えた順也が、がっくりと肩を落とした。


「話は分かったけど。何考えてるの、真央。短大は? どうするつもり?」


まだ残ってるじゃないか、そう言った順也を制して、わたしは両手を動かした。


〈だから、時間をもらった。お父さんとお母さんに相談しないと〉


勝手に辞めるわけにはいかない。


わたしの両手を見つめて、順也が眉間にしわを寄せる。


「辞める……つもりなの? 今まで必死に頑張ってきたのに。あと一年もないのに」


わたしは苦笑いした。


順也はわたしの性格をよく知っている。


へんに頑固なところも、よく知っている。


だからなのかもしれない。


「どうするの?」


と順也が肩をすくめた。


「健太さんには、何ていうつもり?」


〈分からない。でも、きちんと気持ちを伝える〉


順也はわたしを睨んだあと、何かを諦めたかのように小さく苦笑いをした。


「真央は相変わらず、頑固だね。もう、ぼくが何を言っても無理だ。ぼくはそれをよく分かってるんだ」



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