恋時雨~恋、ときどき、涙~
忘れられないひと
皐月。
街は新緑の季節を迎え、若葉の香りが漂うようになった。
もう、夏が近い。
それなのに、季節外れの雪が降ったのかと勘違いしてしまった。
東京。
北区。
王子駅からバスで10分ほどの閑静な住宅街。
小さな川のすぐ側に建つ、少しくたびれたマンションの5階。
川を挟んだ向こうにはスーパーとコンビニが見える。
朝起きて、リビングのカーテンを開けて、初夏の清潔な朝日と純白の眩しさに目を細めた。
施錠を外し、一気に窓を開けて、わたしはベランダに飛び出した。
すごい。
すごい、すごい、すごい!
本当に、真っ白だ。
ベランダの端から端までびっしりと横に並ぶ、チョコレート色のプランター。
そのプランターの中を所せましと埋め尽くし、朝の陽射しをたっぷり受け、緩やかな風に揺れていたのは純白色のレインリリーだった。
三日三晩降り続いた昨晩までの雨はすっかり上がり、抜けるような青空が東京の上空に広がっている。
向こうに見える大通りの街路樹。
新緑の若葉が陽射しを受けて、光る。
きれいな朝だ。
わたしは新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
真っ白なレインリリーを見つめていると、肩を叩かれて振り向くと、お母さんだった。
「おはよう、真央」
お母さんは、今日も顔色が良い。
〈おはよう〉
「ごはん、できてるよ。食べるでしょ?」
わたしは頷きながらも、プランターを指さした。
〈見て。すごい。どうして? 昨日はひとつも咲いていなかった〉
ベランダのレインリリーが一晩で一気に開花したのだ。
「咲いたのね。ほら、雨が上がったから」
と、お母さんはとても嬉しそうに笑った。
街は新緑の季節を迎え、若葉の香りが漂うようになった。
もう、夏が近い。
それなのに、季節外れの雪が降ったのかと勘違いしてしまった。
東京。
北区。
王子駅からバスで10分ほどの閑静な住宅街。
小さな川のすぐ側に建つ、少しくたびれたマンションの5階。
川を挟んだ向こうにはスーパーとコンビニが見える。
朝起きて、リビングのカーテンを開けて、初夏の清潔な朝日と純白の眩しさに目を細めた。
施錠を外し、一気に窓を開けて、わたしはベランダに飛び出した。
すごい。
すごい、すごい、すごい!
本当に、真っ白だ。
ベランダの端から端までびっしりと横に並ぶ、チョコレート色のプランター。
そのプランターの中を所せましと埋め尽くし、朝の陽射しをたっぷり受け、緩やかな風に揺れていたのは純白色のレインリリーだった。
三日三晩降り続いた昨晩までの雨はすっかり上がり、抜けるような青空が東京の上空に広がっている。
向こうに見える大通りの街路樹。
新緑の若葉が陽射しを受けて、光る。
きれいな朝だ。
わたしは新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
真っ白なレインリリーを見つめていると、肩を叩かれて振り向くと、お母さんだった。
「おはよう、真央」
お母さんは、今日も顔色が良い。
〈おはよう〉
「ごはん、できてるよ。食べるでしょ?」
わたしは頷きながらも、プランターを指さした。
〈見て。すごい。どうして? 昨日はひとつも咲いていなかった〉
ベランダのレインリリーが一晩で一気に開花したのだ。
「咲いたのね。ほら、雨が上がったから」
と、お母さんはとても嬉しそうに笑った。