【完】恋愛間違い注意報


「泣いてるの?」



「思い出しちゃったんですよ、此処に来た時のこと」


少しの沈黙の後、クスッと笑みを零した。
葵さんも思い出したかな?




「あの時は、泣き虫だったよね。今もかな?」


楽しそうな口調だけど、甘い声は全身に鼓動を伝える。





「今は…泣き虫じゃあ…」


照れ隠しにクスッと微笑んで、くるっと向きを変えた。
私達は向かい合う形になる。
思わず、俯いて下をみた。
そういえば、此処玄関だよね。
視線が感じる。
でも、恥ずかしくて鼓動が早くなるだけ。




「おかえり」




同じ言葉を葵さんは紡いだ。
でも、それはまるで早く帰って来て欲しかったなんて言ってるように聞こえた。





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