【完】恋愛間違い注意報
1時間後、風景は一変した。
美しく輝く海、砂浜。
緑が生い茂り、そこにひっそりと佇む墓地。
此処が両親の居る場所。
「はい、到着。奥に、例のパン屋があるんだとさ。行ってらっしゃーい」
歯をむき出しにして、笑顔を作るお兄の姿は、どこか不安げだった。
「智沙、行こう」
手を差し出され、そろそろと手を近付けたらあっという間に指が絡められた。
「外で手繋ぐの初めてじゃない?」
「ああ、そうだね。緊張する?」
「馬鹿にしてるでしょ?」
「違うよ、緊張してるならほぐしてあげようかなって」
何で、とは聞けない。
キスに決まってるから。
それに聞いたら、キスされそうだし。
さすがに此処は嫌だもんね。