斎宮物語
その日は、運が良くか悪くか、私への上様のお渡りはなかった。
私の頭の中は悠吾郎様でいっぱい。
ゴサイ…。
男の使用人。
それでも、奥女中に比べ、身分は低い。
悠吾郎様は、たしかどこかの下級武士。
名家ではないけど、ゴサイになる必要なんて、ないはず。
気になって仕方がない。
けど軽々しく出歩けない。
たくさんの女中がいるし。
―――夜を待とう。
夜ならなんとか…。
何かわかるかは、分からないとしても。