斎宮物語

「はぁ…。」

「今の将軍様は、鬼のようなお人にて、いつき殿の御身が心配で…。」

この言葉には、さすがの私も腹が立った。

「上様は、そのようなお人ではございませぬ!
上様は…、とてもお優しいお方にございます!
大方、間部様などの仕業にございましょう。
さぁ、誰にも見つからぬ内に早うお帰りください!」

私は一気に言い放ち、悠吾郎様を追い返した。

悠吾郎様は、こちらを振り返り、

「いつき殿…。」

そう呟いてとても悲しい顔をして帰っていった。


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