斎宮物語

いつき殿!!

そう言って駆け寄って抱きしめたかった。

でも、できなかった。

ただ、目があっただけだ。

それでも私にとっては幸せだった。

私はふと思い付いた。

いつき殿も、私に気づいたはずだ。

なら、いつき殿のことだ。

夜になれば部屋を抜け出して来るのではないか、と。

私は大奥で夜をまった。


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