イジワル王子とお姫様
「桃香ちゃんの指、オレが治してやる」


そう言ってあの子は、想像もしない行動に出た。


――ぱくっ。


……え?


目の前のあの子が、突然私の指を一本くわえた。


呆気に取られ、何も言えなくなる。


指をちゅううと吸うと、パッと口から指を離した。


「バイキン取れた!」


ニコッと笑う笑顔は、今まで見たこともない素敵な顔で……イジメられた事も忘れ、私はあの子に釘付けになった。


今思えば、彼が私の事を『桃香』って呼んでくれたのは、この時一回限りだった気がする。
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