冬の華
彼女に笑って言った。

「じゃあさ、お店の品物全品1つずつ注文しよっか?」

メニューを閉じた。

「えっだっ、ダメだよ…。
じゃあ…私はこのケーキのセットにする」

慌てて決めたにしては、
まともな注文に笑いが漏れる。

「ご注文がお決まりでしたら…」

絶妙なタイミングでウェイトレスが
運んできたお冷を、
受け取った瞬間…。

ヤツの顔が浮かぶ。

思わず振り仰ぎ…
女の顔を注視した。

この感覚は前にも何処かで…。

去って行く女の背中を
目で追った。

「彼女がどうかした?
もしかして例の子なの?」

明るい彼女の声とは、
対称的に呟く俺は、

「嗚呼…否、何でも無いよ…」

尚も目が離せずにいた。

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