冬の華
どうして…一度でも愛した女を?

簡単に割り切れたのか?
やむを得ない事情があったのか?

俺が…もしかしたら母も知らない特別な事情が。

そう思い込みたかったのは、

母が愛した男を、
母自身を、
俺の両親を信じたかった。

けして母は可哀想な人ではない。
俺は望まれて産まれたのだと。

小さな希望かもしれない。
有り得ない戯言かもしれない。

それでも、
俺は…
人が人を愛する奇跡を…
唯の幻だとは思えなかった。

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