冬の華
「ハデスがヌル一族の総称だって何故言わなかった?」

ワンダに知っていて隠されていた気がして腹が立っていた。

声を圧し殺してはいるが明らかに不機嫌極まりない聞き方をする。

《確かに創造主のことをハデスと言うには言うが…。
ヌル様みたいな高貴な方が下界に降りられるなどという事は…
況しては下等な人間の女と交わるなどと断じて有り得ん!
話す必要が何処にあると言う?》

ワンダはそう断言するが、

「下界に降りてこない筈のヌルは来たんだ。
下等な人間の女のことを興味深く聞いてきた」

ヌルの態度を思い出す。
恐怖心が残っているためなのか、やけに鮮やかに甦る残像では

俺の中に何かを探し求めていたがそれは見付けられず変わりに別の何かを見付けたって感じだった。

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