冬の華
何年前に会って以来だろう…。

あの時も
偶然すれ違っただけに
過ぎなかった…。

佳人と親子水入らずでの買い物。

俺の存在に気付いても
顔色一つ変えずに
立ち去って行った。

「通してやれ!」

ヌルが鍵を外したのか、
エントランスのドアが開き
その人物をホールへと
招き入れる。

「ちょっ…勝手に開けるなよ!」

動転した俺は
服を着るべく自室に戻った。

最上階のこの部屋までは
どれくらい時間があるだろうか?

普段なら長く感じるエレベーターの階上が今はやけに速かった。

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