冬の華
「彼の…えっと…親御さん?
何ですか?」

彼女の間延びした感じは
今の張り詰めた空気には
何とも不相当で。

妖艶に微笑むヌル以外は
誰一人反応しなかった。

「約束は覚えているだろうな?」

母を見据えるヌルの目が
威光を放つ。

「もちろんよ!
だからあと少し我慢すれば…。
私がどんなにか身を切り裂かれる思いで匿って来たと思ってるの?息子は誰にも手出しさせない!」

母も負けて居なかった。

どういうことだよ?
匿って来ただと?

「20歳を迎えるまでにナルの血に覚醒さえしなければ諦めるって。ナルが…この子を無理矢理目覚めさせるんじゃないか恐ろしくて。見付けられない様に必死で離して隠して来たの!
もうすぐなのよ?
この子と漸く一緒に暮らせる」

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