冬の華
自分の事を話しているのだが、
何処か他人事の様で…
頭の中はやけに冷静に研ぎ澄まされていく。

「泉も自ら探し充てた様だぞ。
俺が早苗を見付けた様にな…」

ヌルが母を見据える。

母は何を察したのか
青ざめた顔で彼女を見つめた。

「まだ未熟な気を補い満たす泉。かつて好奇心に負け下界へ降りた俺はハデスの掟に下界への降下を禁ずる意味を悟った…」

愉快そうに語り始めるヌルに
一同の視線が集まる。

「我等と下等な生物等の交わりを極に怖れた先祖は我等にのみ反応する結界…否、罠を仕掛けていやがった」

ヌルの嬌笑が印象的で
惹き付けられる感覚を覚え
急ぎ結界を張り
ヌルを閉じ込める。

< 162 / 298 >

この作品をシェア

pagetop