冬の華
「欲望に溺れることなどではない…死を悟り性欲を押さえられないことにだ。
性欲が強くなるのは己の遺伝子を残そうとする本能なのだが…。
ハデスの遺伝子を絶やすことなど当然タブーにも程があるんだよ」

ヌルの視線が俺を捉える。

「だが…泉はいずれ枯れるぞ。
無限に湧き出る泉など存在しない…その時お前は女をどうする?」

「どういう意味だよ!」

感情のままにヌルを睨み返す。

「俺はあんたとは違う!
あんたは母を俺を…簡単に棄てた俺は愛する者を手放したりはしない!」

ヌルの眉が微かに動きビリビリと身体を射す気と圧力に堪えきれず押し潰され平伏していく。

「違うのよ…」

母もまた項垂れていった。
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