冬の華
今頃そんな事を言われても…。

時が流れ過ぎてる。

第一…俺は母の記憶は無いんだ。

「ナルに懇願したわ…。
此処で親子三人で暮らしたいって…けど長期間ハデスを空けるのは世界を滅ぼすことに繋がるから、出来る筈がなかったのよ…」

ハデスを空けられないから…。

けど…
なら何故俺は独りきりだった?

親の愛情がない訳じゃなかった。

なら…、
何故俺は…。

まだだ…。
納得するにはピースが足りない。

「簡単なことだな…」

ヌルが流麗な息を漏らす。

「早苗に条件を出したからだ。
みすみす息子を奪われる親心とは実に感慨深い…。
一度でも行く末に思い馳せれば尚引き裂かれるものは堪え難し…。加え俺は叶わぬ望みはなかった」

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