冬の華
歯を食いしばり
必死で感情を押さえ込もうとする俺の視界に彼女の膝が映り込む。

「私の名前知ってる?」

膝頭に添えた手を見つめる。

知ってるかって?

当然じゃないか…。
それが今何の関係があるんだ。

彼女の時折見せる場違いな態度に今は答える余裕さえなかった。

「真実の愛と書いてマナだよ!
この名前を考えてくれた両親に、私は凄く感謝してるの。
名前に負けない様に愛されたから名前に負けない様に誰かを愛する自信もある」

嗚呼…そうか。

彼女は場違いなんかじゃない。

空気を読めない訳でもなくて…。

「ありがとう…真愛」

俺に気付かせていたんだ。

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