冬の華
徐に継父を振り返った。

「さてお前の記憶の操作をさせてもらおうか」

ヌルの言葉に目を見張る。

「ハデスと関わったことは忘れてもらわねばならんからな」

解る。

言ってることは解る。

仕方ないことなのだろうが…。

「待って欲しい!
私は又…零稀君の存在を忘れさり家族から疎外させてしまうのか?この先も孤独を味わせるのか?」

継父の訴えに
母を視界に捉えたまま。

「早苗次第だが…零稀を匿う必要のなくなった今や共に暮らすのが望みだとすれば叶えてやれ…。
だが零稀は今の生活を手放す気はなさそうだぞ早苗」

嬌笑を浮かべる。

「零稀…貴方の自由にしなさい」

「零稀君…
此れだけは覚えておきなさい。
君は既に私の息子だ!
いつでも頼ってきなさい」

二人の顔を交互に見やり。

静かに口を開く。

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