冬の華
立ち止まることなく、
ゆっくり歩を進める。

息苦しいほど呼吸が乱れ、
痛いほどの鼓動を感じる。

あと一歩足を前に出せば、
緊張感が頂点に達したとき、

《お前が使い魔の代わりか?》

頭の中に声が響く。

その声に、
振り返り、
此方を見据える顔とブツカル。

その冷たく残酷に光る目に、
背中の毛が逆立つ。

《この間逃がしてくれたことに、
礼を言おう。
まさかこんなガキが代わりとは…
使い魔の霊力を感じない今、
我々に敵はないわけだ》

裂けた口元を緩ませた。

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