冬の華
指が触れた腕から血が吹き出し
滴り落ちて床に溜まっていく。

「あっ…傷が…」

切れた傷口からは
触手が飛び出し
縫い合わせる様に修復していく。

「部屋を汚してしまいました」

完全に塞がった傷は
まるでマジックを連想させる。

ただ、
充満した血の薫りと
残された血痕だけが
それを証明していた。

「支払いは結構ですよ!
その為に来た訳ではありません。偶々通りすがり偶々出会した俺に親切にして頂いたお礼ですから」

この血の香りは
ある種を誘き寄せる餌。

これだけ強烈に放出させてやれば食い付かずにはいられない。

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