冬の華
ニタニタ笑いながら、
繰り広げられる様子を、

何も出来ずに茫然と眺めていた。

揺れの影響からか、
直接の影響なのか、
落ちてくる物で怪我人が出始め、
電線が火花を散らし、
道路標識が根本から折れ曲がる。

叫び逃げ惑う人々。

逃げ出したい。
それが今の素直な心境だった。

想像を絶する強大な力の前に、
顔も強張る。
押し寄せる不安と恐怖の波に、
体が震えて動くことが
出来ずにいた。

「ママ」

この騒ぎではぐれたらしい、
一人の子供が目に映る。

その子の上には、
今にも崩れ落ちてきそうな外看板が爆風で大きくきしんでた。

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