冬の華
先を急かしたくて逸る。

「…パパが」

スカートのポケットから
一枚のメモを取り出す。

「家に帰って来て欲しいって…」

渡されたメモには
継父の人柄がよく解る

達筆な字で一言。

【零稀は私達の自慢の息子だ】

継父が少女を寄越すのは

仲の良い兄妹になって欲しいから

ゆくゆくは

本物の家族として過ごしたいから

その溢れる思いが伝わる。

「俺…頑張るよ」

少女の頭に手を乗せ

「兄として認めてもらえる様に」

そっと撫でる。

言葉で伝えるのはまだまだ苦手だ

だからせめて、
少女に伝わる様に

俺は君を大切にする。

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