冬の華
「人の体温が溶かすんだ。
心と同じ人の温もりで溶け、
又、他の誰かを癒せる様に
自然に還り大地を潤す」

「そんな理屈はいらない…。
私のこと子供だと思ったでしょ」

ご機嫌を損ねた彼女を抱き直し
唇を重ねた。

「冷たいな…」

「…零稀だって」

どちらともなく
重なった口付けは
次第に深く変わる。

「真愛…咲いた華は散るんだ。
綺麗なまま残すことは出来ない」

力強く凛と咲く
綺麗な華…。

手のひらに雪を集め
差し出す。

「見ろよ…」

俺の手の上で
雪は薄く色付く。

透明な華が
艶やかに色付く。

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