冬の華
媒体となる万能柄…
ってかただの柄だけど。
を握り締めイメージする。

柄の先から放たれる気は、
イメージ通り
鞭のようにしなり、
紐となり巻き付き、
それを捕えた。

案外呆気なかったな。

後は、送還か?

捕えた男に近付く。

《ゴメン…好きだよ》

なっ…何だ?

ワンダを振り返るが、
知らん顔してソファで丸まってる
ってかこんな時に寝てんなっての

もう一度男を凝視する。

《ゴメン…最後に言いたかった》

それは男から漏れる…
心の声で。

《ゴメン…俺のためにただ笑って欲しかったんだ》

彼女を思う気持ちに溢れてて、
マジに好きな女の子残して、
先に逝く辛さ…。

《ありがとう…会えて良かった》

伝えてやりたい…。

マジでそう思った。

彼女を引き寄せ、
彼女の顔を両手で包む。

《ありがとう…幸せに》

ゴメンとありがとうを
何度も繰り返す男の声が
彼女に届いたかは分からない。

けど、自ら昇還して逝った彼氏を
彼女は涙を浮かべて見つめていた

だから俺は、
届いたと信じたかった。

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